2013-03-13

アジアで売る 挑む日本流:上  気配り営業に本領

 ベトナム・ホーチミン市の夜の酒場。「SAPPORO」のロゴが入った黒のワンピースの女性が、笑顔を振りまく。サッポロホールディングス現地法人の派遣社員だ。
 英サブミラー社のビール「ガンブリヌス」を売る女性も動き回る。でも、サッポロの販売員の動きは少し違う。
 落ちた箸をひろう。他メーカーの瓶でも開ける。そんな気配りが目につく。
1杯目はオランダのハイネケンだった男性客は「親切にされ、ついサッポロを頼んじゃった」。

 ベトナムは、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国で人口は3位。今後の成長株とみて世界のビールが攻勢をかける。
 日本のビール市場は16年連続で縮小中だ。需要を求め、サッポロは1年ほど前にここで本格営業を始めた。現地生産の「サッポロプレミアム」は、値段が現地ビールのほぼ倍、1ケース40万ドン(約1800円)前後の高級ビールだ。

 営業の女性約650人を雇ったが、愛想笑いは苦手、接客もやや雑――それがサッポロ現地法人社長の岸裕文さん(50)の第一印象だった。
 だがベトナム人が納得できるように説明を重ね、丁寧さが売りの日本式営業が身についてきた。「日本では当たり前のやり方で違いがつくことがわかってきた」と岸さん。

 日本式を現地に持ち込む先輩企業は少なくない。
菓子のロッテは15年前にベトナムに出て、現地シェア首位・米ガム大手リグレーの背中を追う。1千人の直販員がガム「キシリトール」などをバイクに積み、1人1日50店を回る。
他社なら放置しがちな賞味期限切れ商品をこまめに取り換える。商談などで約束の時間をきちんと守るのも、現地では新鮮に映るという。
    朝日新聞(2013/3/13 朝刊)      → 「朝日新聞デジタル」のお申し込み